
バーチャルモデルとは?
CGを使ってリアルに描かれた架空の人物が生身の人間のようにインフルエンサーとして振る舞う「バーチャルモデル」が活躍の場を広げています。今回は、現在活躍している有名なバーチャルモデルについてご紹介します。バーチャルヒューマンがインスタグラムやアパレルブランド等のPRで活躍しています。
バーチャルモデルとは?有名バーチャルモデルの紹介
そもそもバーチャルモデルとは、生身の人間と見間違えるほど精巧に描かれたCGの人物画像や映像を使い、SNSなどを用いて情報発信を行っていくことで、生身のモデルやインフルエンサーのように大衆への影響力を持つ架空の人物を作る試みです。また、こうして人工的に作られたモデルそのものを指す言葉でもあります。このバーチャルモデルは、架空の存在でありながらリアルのモデルさながらに日常の風景に溶け込んだ画像を発信することが特徴であり、特に精巧なものは実在の人物を使ったものと区別が困難になるほど真に迫ったものとなります。
人気が出たバーチャルモデルとのコラボレーションも盛んであり、アパレル業界や化粧品業界などが積極的にバーチャルモデルとのコラボ企画を打ち出しています。バーチャルモデルの運営やコラボ先の企業にとっては実在の人物と異なり、炎上などのスキャンダラスなリスクをコントロールできることが強みです。老化などで容姿が不可逆的に変わってしまうこともなく、半永久的に使用できるというメリットもあります。
ここでは、現在活躍しているバーチャルモデルの中から特に人気を集めている存在をいくつかピックアップしてご紹介します。いずれも個性的なキャラクターを確立しているため、バーチャルモデルの現状を知るためのひとつの指標となるでしょう。
バーチャルヒューマン代表的な「imma(イマ)」
バーチャルモデル、ひいてはリアルに描かれた架空の人物であるバーチャルヒューマンの中でも代表格として話題に上がるのが「imma(イマ)」です。2021年9月6日、東京パラリンピックの閉会式に登場したことでその存在が広く周知され、バーチャルヒューマンやバーチャルモデルへの注目を大きく集めるきっかけとなりました。
immaは2018年7月にアカウントが立ち上げられました。InstagramとTwitterを中心に活動しており、等身大の少女が自らSNSへの投稿を行っているかのようなリアルさを感じさせる画像は、それまでのCGキャラと一線を画すものでした。トレードマークはピンクの髪で、可愛らしい顔や整ったスタイルを存分に活かし、現代日本における若い女性のファッションとカルチャーの象徴的な存在として影響力を獲得しています。このリアルさを出す秘訣こそ、顔はCGで作成しつつも身体の部分は実在のモデルを使って実際の風景の中で撮影し、両者を合成するという手法です。CGによる部分を最小限に留めることで、違和感を抑えています。
CG作成はCafeGroup株式会社の傘下であるModelingCafeが行い、運営や管理をAww社が担当しています。コスメティック業界やアパレル業界とのコラボを精力的に行っており、2022年初頭において最も勢いのあるバーチャルモデルと言えるでしょう。
着たらこんな感じ⚡️💚
— imma (@imma_tw) February 21, 2022
みんなは、どちらが好き…?👀#NFT #VirtualFashion https://t.co/qipn9JQtWa
バーチャルガール「Ella(エラ)」 (@ella.imagination)
世界的に有名なコンテンツ企業であるディズニーの日本法人であるウォルト・ディズニー・ジャパンによって世に送り出されたのが、バーチャルガールの「Ella(エラ)」です。2020年10月23日にInstagram上でアカウントが開設されました。immaを手掛けたAww社が制作に協力しています。
ウォルト・ディズニー・ジャパンが立ち上げた「バーチャルガールプロジェクト」の根幹を担う存在で、ディズニーと建築物が好きな女の子という設定のもと、ディズニーに関する様々な情報を発信しています。SNS上の投稿だけではなく、ライターとしてディズニー関連イベントの体験レポートを執筆したり、モデルとしてディズニーのファッションアイテムを身に着けてキービジュアルを飾ることもあり、メディアを問わず幅広く活躍しているのが特徴です。
Aww社が保有するバーチャルヒューマン技術の「MASTER MODEL」が使用されており、imma同様にCGで作成した頭部の画像を現実の風景の中で実在のモデルを使用して撮影した身体の写真に合成するという手法でリアルな表現を行っています。Ellaは、ディズニーのコンテンツ産業の一翼を担っていく存在として、これからもさらなる活躍が期待されるバーチャルモデルです。 https://www.instagram.com/ella.imagination/
女の子の幻想や理想、バーチャルドール「uca / ウカ」(@xx_uca_xx)
ファッションモデルの菅野結以がプロデュースを手掛けるバーチャルモデルが、バーチャルドール「uca(ウカ)」です。2019年6月20日にInstagramのアカウントが開設されました。所属するモデルが全員バーチャルモデルであることが特徴のモデルエージェンシーVIMに所属している点も含めて話題となっています。
「uca」の名前は「羽化」から来ていて、少女から大人の女性に変化することを羽化になぞらえた上で、「羽化する一瞬を永遠に生き続ける、女の子の理想と幻想を体現した存在」というコンセプトの下にキャラクター作りが行われています。全体的にミステリアスかつアンニュイな雰囲気を漂わせており、ファッションもゴシック系を中心としたドーリーなものを身に纏うことが多いです。好きなものとしてヴィンテージドレスや長風呂、嫌いなものとして人混みや紫外線、原色、早起きを挙げており、内気でインドア系の女の子というキャラクター像を確立しています。uca本人曰く、「年中無休で夢見心地に生きている」とのことです。
デビュー当初より人気モデルとの2ショット写真をアップロードし、アクセサリーブランドとのタイアップも行うなど積極的なコラボレーションを展開しており、バーチャルモデルとしては活発に活動を行っている一人です。その独特なキャラクターにはファンも多く集まっており、今後の動向に目が離せないバーチャルモデルの一人と言えるでしょう。
透明感のあるルックスの女子高生「Saya / サヤ」(@sayacg)
夫婦で3DCG制作を行うユニット「TELYUKA(テルユカ)」の手によって生み出されたバーチャルモデルが「Saya(サヤ)」です。元はフォトリアルな表現の追求を行うためのTELYUKAのポートレート作品として生まれたものでした。しかし、そのあまりの精巧さは人間に似せた像に対する不快感、いわゆる「不気味の谷」を越えた表現であるとして話題になりました。
見た目が本物の人間へと限りなく近づいていく中で、Sayaを「人間みたいに、みんなと喋り友達になる」ようにするべく、「Saya Virtual Human Project」を2017年に始動させます。最新技術を駆使して「17歳の女子高生」を再現するためのもので、2018年には対人感情認識対話システム「Emo-talk」により、感情のある対話を行うことが可能となりました。このプロジェクトは現在も続いており、その進化は留まるところを知りません。
また、各種SNSでも画像を公開しながら日常風景を綴っており、その透明感のあるルックスで多くの人を魅了しています。パラリンピックでは手話を披露して選手や観客にメッセージを伝え、テレビでも特集されるなどメディアへの露出も盛んに行っており、その度にバーチャルヒューマンの可能性を見せ続けているのも特筆に値するでしょう。まさに、Sayaはバーチャルヒューマンを牽引していく存在と言えます。
Sayaの正式なPRムービーお披露目です。大き目な画面1080p60HDで見ると実在感が上がって、より近く感じてもらえると思います。Sayaに沢山のお友達ができますように☺️#ミスiD #CGSAYA #CG女子高生 https://t.co/78RfMWLA9V
— TELYUKA (@mojeyuka) August 31, 2017
赤い髪が特徴の男性バーチャルヒューマン。immaの弟(@plusticboy)
immaの弟として登場した男性バーチャルヒューマンが、Awwによって運営されている「plusticboy(プラスティックボーイ)」です。2019年11月にデビューし、バーチャルモデルとしての活動を開始しました。姉であるimmaと共に活動する機会も多く、本物のモデルとの3ショット写真を公開した際には誰がCGなのか見分けがつかないと評されるほど、彼も本物の人間と見紛うばかりのルックスの持ち主です。トレードマークは燃えるような赤い髪で、その甘いマスクはどことなく姉に似ている雰囲気があります。
性格はやや尖っており、不器用なところが多く愛想よく人と話すのが苦手とのことです。しかし、カルチャーを愛するところなど姉譲りの人間性も見せており、そのキャラクターと整ったルックスに魅了されたファンは少なくありません。「誰かに影響を与えられるような存在になりたいから、真実性のあることを発信していきたい」と、インフルエンサーとしてのバーチャルモデルの活動には意欲的な姿勢を見せています。
2020年にはファッションショーのキービジュアルを担当し、活動を本格化させていきます。バーチャルモデルでありながらも、ランウェイモデルのオファーがあれば是非とも挑戦したいとコメントしており、姉同様にこれから活躍の場を広げていくことが期待されているバーチャルモデルの一人です。
参照:https://aww.tokyo/
男性バーチャルインフルエンサー。Liam Nikuro / リアム・ニクロ(@liam_nikuro)
日本初のバーチャルインフルエンサーという触れ込みで活躍しているのが「Liam Nikuro(リアム・ニクロ)」です。米国・ロサンゼルス出身で父親はアメリカ人、母親は日本人のハーフであり、日本人離れしたルックスが印象的です。モデルや音楽などの分野で活動するマルチプロデューサーとして、2019年3月のデビュー以降様々な活動を行っています。
バーチャルヒューマンとしての造形は研究し尽くしたものとなっており、キャラクター像の構築においてはInstagramのユーザーに事前調査を行うことで好感度の高さを目指しています。また、顔のモデリングでは肌の質感や瞳の表現をこだわり抜くことで不気味の谷を見事突破しました。インフルエンサーとしてスピーディな行動が求められることから、imma等と同様にCGモデリングは顔のみに留め、身体は実写としています。
すでに様々な活躍を行っており、アメリカのプロバスケットボールチームであるワシントン・ウィザーズとのパートナーシップを締結するなど、日米ハーフとしてのキャラクターを活かして主たる活動領域をワールドワイドに定めているのが特徴です。現在はバーチャルモデルとしての活動が主になっていますが、グラミー賞の常連であるプロデューサーチームと一緒に映った写真をInstagramに投稿するなど、音楽や映像などの分野における活動にも意欲を示しています。
アパレル業界にも続々バーチャルモデルが進出! GUやZOZO等、アパレル発のAIを使いバーチャルモデルを生成。「INAI MODEL / イナイモデル」(@inaimodelofficial)
ここまでご紹介してきたバーチャルモデルはすでに自らのキャラクターを確立し、そのキャラクターを最大限に活かした活動を行っています。その一方で、AI技術を活かしてバーチャルモデルを生成するという試みも行われています。それこそが、イメージナビ株式会社によって展開されている「INAI MODEL」です。最大の特徴はAI画像技術「Generative Adversarial Networks(GAN)」を駆使した人物モデルの生成で、実在しない人物の画像をAIが高いクオリティで作り上げます。
AIによるバーチャルモデルの生成は、ニーズや用途に合わせた人物画像を瞬時に用意することが可能というメリットがあります。また、こうして生成されたバーチャルモデルは容姿が衰えることがなく、非実在であることから肖像権の問題やモデル契約に関する考慮も不要といった利点もあるため、モデルへのクレームリスクの対策やモデルの契約に関する作業の簡略化といった実務面での恩恵も得られます。INAI MODELは、商品の使用イメージやカタログ画像としての使用から本格的なバーチャルヒューマンとしての運用まで、幅広く活用できるAI画像サービスと言えるでしょう。
INAI MODELで作られた様々な顔をご紹介。
INAI MODELでの画像生成は、AIによって生成されたとは思えないほどのリアルさが特徴です。しかも、人種や性別、年齢を問わず、様々なパターンの人物画像を生成します。例えば、女性の顔を一つ取っても日本の女子高生や西欧の若い女性、ラテンアメリカの主婦など、考えうる限りあらゆるパターンの女性の顔がまるで実在人物であるかのようなリアルさを伴う形で生成可能です。
表情のパターンも豊かで、例えば満面の笑みや微笑、不敵な笑みなど感情の機微を的確に表現した様々なバリエーションの「笑顔」を表現することができます。そして、何より素晴らしい点として、どの顔もいわゆる「不気味の谷」を突破しており、中途半端なリアルさによる不快感はまるで感じさせず、AI生成とは思えないほどに細部まで作り込まれている点も見逃せません。
ありとあらゆるキャラクターの非実在人物の画像を瞬時に作り出すことができるINAI MODELは、それまでCGデザインなどの知識を必要としたバーチャルヒューマンの運用のハードルを大きく下げる存在となっていくことでしょう。



将来的にはメタバース空間にバーチャルモデルが登場か?!
バーチャルモデルの新たな活躍の場として注目されているのが「メタバース」です。INAI MODELでは、メタバースにおけるAI生成バーチャルモデルの運用も視野に入れており、メタバース内におけるアバターやメタバース内で活動するバーチャルモデルの運営といった活用が行われていくと予想されます。今後メタバース関連の技術やサービスの発展が続けば、INAI MODELのAI画像サービスも重要性をさらに増していくことでしょう。
まとめ
今後は各々の企業が独自のバーチャルモデルを用意して、広報やブランディング、コンテンツマーケティングといった戦略に組み込んでいくことが予想されます。immaやSayaといったバーチャルモデルたちがバーチャルヒューマンとしての新たな可能性を切り開く一方で、INAI MODELで生成されたバーチャルモデルが様々な企業のイメージ戦略を手助けしてくれるでしょう。ぜひ一度問い合わせすることをおすすめします。