
センシティブ使用という言葉をご存じですか?人物写真を広告やWEBサイトなどで商用利用する場合、このことについて詳しく知っておく必要があります。例えば、写真素材であれば使用許諾の禁止事項に明記されていない使い方でも、場合によっては思わぬトラブルに発展する可能性があります。ここでは、センシティブ使用について詳しく解説していきます。
人物写真を商用利用する際の「センシティブ使用」って何?
センシティブ使用とは、被写体となるモデル本人や関係者が不快に感じる使用方法や表現方法のことを指します。また、モデル本人が広告対象と関係があるように見せる表現方法も、センシティブ使用に該当します。例えば、薬物乱用撲滅に関する広告で人物写真を使用すると、そのモデルが薬物を使用しているかのような印象を与えてしまう可能性があります。モデル自身が「ネガティブなイメージで使われた」と不快に感じた場合、モデル本人やモデルエージェントなどから広告主にクレームが入るリスクも考えられます。リスク回避をするために、センシティブ使用で人物写真を使う場合は事前に許諾を取る必要があるのです。
次のような使用では特に注意が必要です。
政治・宗教・ギャンブル・風俗・ポルノ、出会い系・消費者金融・たばこ・美容外科・身体的障害・精神病関連(うつ病・過食症・拒食症)・薬物乱用・疾病・老化現象・避妊・不妊・妊娠中絶・生殖関連・幼児虐待・ドメスティックバイオレンス・セクシャル・ハラスメント・パワーハラスメント・痴漢・性転換・同性愛・反社会的勢力・原子力発電・国粋主義・右翼団体・過激なパロディーなど。
なお、センシティブ使用は人物写真に限らず、撮影に使われた道具や撮影場所についても問題が発生する可能性が考えられます。近年ではモデル本人やモデルエージェンシーだけでなく、コンテンツを見た一般の人からも「配慮を欠いている」「不快な表現だ」など、大きなバッシングを受けるケースは少なくありません。クリエイティブ作品を制作する際、メッセージ性や表現を追求し続けた結果、センシティブ使用への配慮がおろそかになってしまうことがあります。人物写真などを商用利用する場合は、モデル本人など相手が不快にならないコンテンツなのかどうか、十分考え、関係者と協議した上で使用するようにしましょう。
センシティブ使用の代表例とは
表現に対しての感じ方は人それぞれ異なります。そのため、どういった使用をするとセンシティブ使用になるか明確な指針や線引きはありません。ここからは、具体的なセンシティブ使用の代表例をいくつかご紹介します。なお、今回ご紹介する例以外にも、センシティブ使用となるケースはありますのでご注意ください。
病気・健康に関する内容
関連項目
美容外科、身体的障害、精神病関連(うつ病・過食症・拒食症)、疾病、老化現象、避妊、不妊、妊娠中絶、生殖関連など。
具体例
- 精力剤の販促ツールに人物写真を使用する
- 病気予防を促す広告の患者役に人物写真を使用する
- 美容整形を宣伝するコマーシャルに体験者として人物写真を使用する
特定の政治や宗教、思想に関する内容
関連項目
政治、宗教、主義主張、差別、過激なパロディーなど。
具体例
- 特定の政治団体のホームページに支持者として人物写真を使用する
- 葬儀サービスの遺影に人物写真を使用する
- 特定の人種を優遇する宣伝ポスターに人物写真を使用する
風俗店や出会い系サイトなどに関する内容
関連項目
ギャンブル、風俗、ポルノ、出会い系など。
具体例
- アダルトサイトの広告に人物写真を使用する
- 風俗店で働くスタッフとして人物写真を使用する
- 出会い系サイトやマッチングアプリの利用者として人物写真を使用する
犯罪や麻薬、暴力に関する内容
関連項目
痴漢、ドメスティックバイオレンス、幼児虐待、セクシャル・ハラスメント、パワーハラスメントなど。
具体例
- 児童虐待がテーマの広告に人物写真を使用する
- 痴漢防止のポスターに人物写真を使用する
- パワーハラスメントに関するイメージに人物写真を使用する
特定の製品やサービスに関する内容
関連項目
消費者金融、ギャンブル(パチンコ・競馬など)、たばこ、原子力発電など。
具体例
- パチンコを宣伝するコマーシャルに利用者として人物写真を使用する
- 消費者金融のトラブル相談広告に被害者として人物写真を使用する
- 喫煙防止のポスターに喫煙者として人物写真を使用する
センシティブ使用の許諾を得るにはどうしたらいい?
広告などで使用される人物写真は、基本的にモデルリリースと呼ばれる肖像権使用同意書をモデルと取り交わしています。モデルリリースとは、モデル本人が映った作品の販売や使用について同意してもらう契約書です。しかし、モデルリリースを取得している写真だからといって、どのような使い方をしても良い訳ではありません。モデルリリースを取得していても、センシティブ使用に該当する場合は別途確認が必要になります。問い合わせをせずに使用した結果、モデルやモデルエージェンシーから強いクレームが入り、最悪のケースでは使用の差し止めや訴訟問題に発展する可能性もあります。
しかし、センシティブ使用に関しては明確な定義はなく、どこまでの使用が安全でどこからがセンシティブ使用になるかは人それぞれの考え方によって異なります。少しでも不安があるなら、関係者に事前確認することをおすすめします。
- 写真素材の場合:各販売会社へ問い合わせをしましょう。写真を使用するコンテンツのコピーや最終制作物のイメージなどを相手に提出し、使用しても問題ないか判断を仰ぎます。例えば、写真素材を販売するイメージナビ株式会社では、各種権利に関する問い合わせや権利処理をサポートする「ライツクリアランス」というサービスを無料で提供しています。
- モデル撮影の場合:撮影前にモデル本人やモデルエージェンシーに、センシティブ使用について確認した上で、用途を明記したモデルリリースにサインをもらうなどしておくと安心です。撮影後にセンシティブ使用になりそうな場合は、都度問い合わせて使用できるか確認を取りましょう。
センシティブ使用がOKなモデルを見つけるには
まずはモデルエージェンシーや写真素材販売各社に問い合わせをしましょう。媒体、用途、予算、センシティブ使用になる可能性がある旨も必ず添えて相談することで、撮影可能なモデルもしくは利用可能な写真素材を提案してくれます。例えば、写真素材を販売するイメージナビ株式会社では、専門のリサーチャーが条件に適う写真・動画素材を無料で探して提案する「フォトリサーチサービス」を実施しています。
そうした手順を踏まえてもなおNGと言われる案件には、「INAI MODEL」のようなバーチャルモデルを活用する選択肢もあります。バーチャルモデルとは、CGを使って作成された架空人物を指します。架空の存在でありながら、リアルのモデルと同じように風景に溶け込んだ画像を作れるのが特徴です。実在しない人物であるため、リアルモデルよりもセンシティブ使用に対して寛容な傾向があります。もちろん、必ずしも全てのコンテンツで確実に使用できる訳ではないため、サービス窓口に必ず事前に問い合わせるようにしましょう。
バーチャルモデル「INAI MODEL」とは
「INAI MODEL」とは、GANと呼ばれるAI技術を使って作る実在しない人物モデルのことです。GANによって生まれたモデルは、実在するモデルと見分けがつかないほどクオリティの高い仕上がりとなります。日本人モデルはもちろんのこと、人種や性別、年代の違うモデルを作ることが可能です。「INAI MODEL」はカタログや広告モデルなどで多数活躍しており、さまざまな業界とコラボ企画が行われています。「INAI MODEL」は撮影による制作コストや納期を大幅に短縮できるのも魅力です。モデル探しの手間もかかりませんので、案件のスピーディ化が図れます。
また、実在するモデルではないため、センシティブ使用についても、モデルの許諾は不要です。モデル本人からクレームが入る心配もありませんので、安心して使用できるでしょう。契約期間の制限もなく、企業のイメージキャラクターとして長く活用することも可能です。リアルのモデルとは違い、バーチャルモデルは炎上やスキャンダルなどのリスクを考える必要はありません。老化などで容姿が変わることもありません。
センシティブ使用について理解した上で人物写真を使いましょう
近年では、無料のストックフォトサイトなどでも人物写真の入手が容易になりました。しかし、簡単に入手できる写真であっても、使い方には十分注意する必要があります。モデル本人やモデルエージェンシー、もしくは第三者が不快に感じてしまうと、コンテンツの利用停止や訴訟にも繋がりかねません。写真を使用する前に、誰かが不快な思いをしないか一度立ち止まって考えることが大切です。わずかでも懸念がある場合は、写真の提供元やモデル本人、エージェンシー等に相談することがリスク回避の鍵となります。「INAI MODEL」のようなバーチャルモデルもフレキシブルに活用しながら、安心安全な広告制作を行いましょう。