
自社サービス・商品のプロモーションにおいて、実在のモデルを起用して広告を展開しているという企業は多いでしょう。話題性のある人気タレントを起用する事は大きなメリットが期待できますが、その一方でメタバースと呼ばれる概念が多くの企業から注目を集めています。今回は、ビジネスシーンに革命を起こし得るこのメタバースとその舞台となるプラットフォームについて見ていきます。
メタバースの概要
導入する企業が増えているとは言え、メタバースという言葉にまだまだ馴染みがないという人も少なくありません。まずは、メタバースの定義や歴史について簡単に学んでおきましょう。
メタバースとは何か
メタバースは「meta(超越した)」と「Universe(領域・分野)」を組み合わせた造語であり、インターネット上に展開されている3D仮想空間を意味しています。仮想と現実の領域を横断し、新しい価値や世界を構築しているのがメタバースです。IT業界の目覚しい技術的進歩によって、インターネットを活用したサービスのクオリティは右肩上がりを続けています。加えて、2020年以降は新型コロナウイルスの影響も相まって「非対面」というキーワードが様々な業界で重要視されて来ました。メタバースは「技術の進歩」と「時代のニーズ」によって注目を集めています。
種類は大きく分けて3つ
メタバースには大きく分けて「VR」「AR」「バーチャルワールド」という3つの種類に分類されます。VRとは「Virtual Reality(仮想現実)」の事を指す言葉で、仮想空間の中で現実的・現物のデータや情報をやり取りするという概念です。専用ヘッドセットを装着し、現実世界に居ながら仮想空間の世界を疑似体験するアトラクションを思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。一方のARは「Augmented Reality(拡張現実)」を略したものであり、デバイスを通じて現実世界にデジタルの情報を引き出します。2016年にリリースされたスマホ用アプリゲーム「Pokemon Go」は、このAR技術を用いたサービスです。VRでは仮想世界、ARでは現実世界をベースとして仕組みが成り立っています。バーチャルワールドは仮想世界ですべてが完結するタイプのメタバースと覚えておきましょう。
メタバースでは何が出来るのか
メタバースは既に様々な企業が事業参入や導入を進めており、活用の幅も広がりを見せています。例えば、メタバースではユーザーがアバターと呼ばれる自分の分身を作成し、デジタルの世界で交流を深める事が可能です。作成する自分の分身は必ずしも自分に似せる必要はなく、自分の好みに合わせる事が出来ます。感染症対策として日本でも普及したWeb会議やオンライン面談もまたメタバースの活用事例です。エンタメ業界ではオンライン配信を通じたライブ・イベントの開催を行う事例も増えています。
また、メタバースに付随する革新的な技術として「ブロックチェーン」と「NFT」の2つが挙げられます。ブロックチェーンは取引履歴を連鎖的に記録する技術であり、インターネット上の取引における情報の隠蔽や改ざん防止に効果的です。NFTは「Non Fungible Token」の頭文字を取ったもので、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれています。コピー不可能な暗号資産として機能するNFTは、画像や音楽をはじめとする物理的な形を持たないデジタル資産の取引における安全性を向上させました。この2つの技術により、メタバースは暗号資産取引の場としてもビジネス界から注目を集めています。
歴史は1990年代に遡る
メタバースという概念が初めて世に出回ったのは1992年の事で、アメリカ人作家であるニール・スティーヴンスンの著作「スノウ・クラッシュ」の中に登場します。この当時描かれていたメタバースの概念に近いサービスとしては、2003年にアメリカのLinden Lab社が立ち上げた「Second Life」というサービスが挙げられます。その後も2011年に「Mine Craft」、2020年には日本企業の任天堂が開発した「あつまれどうぶつの森」が人気を博すなど、メタバースの世界はエンタメ業界で目立った注目を集めて来ました。ビジネス業界においても、大手SNS運営元であったFacebook社が2021年に社名を「メタ・プラットフォームズ(通称メタ)」に変更するなど、本格的な事業参入が進んでいます。
メタバース・プラットフォームで出来る事とは
メタバース・プラットフォームは仮想空間を生成するためのシステムを提供しているサービスです。メタバースの世界を体感するためには、原則としてメタバースに対応したプラットフォーム(基盤となるシステム・サービス)が必要になります。例えば、前述したSecond Lifeもメタバース・プラットフォームの一例です。メタバース・プラットフォームはそれぞれに異なった機能を備えているため、利用者側は用途や目的にマッチしたものを任意で選択する事が出来ます。複数人でコミュニケーションが可能なもの、NFT取引が可能なもの、仮想空間を高い臨場感で体感出来るものなど種類は様々です。
誰でも簡単に仮想空間を作れる時代
メタバース・プラットフォームは仮想空間を生成するためのシステムを提供しているサービスであり、企業もユーザーも複雑なプログラミング技術やコード記述を必要とせず仮想世界を利用する事が可能です。例えば、法人がメタバース・プラットフォームを利用して仮想空間を生成し、そこへ顧客やユーザーを招待するといった具合に活用されます。もちろん個人で利用可能なサービスもあり、間口が広く解放されています。現在のメタバース・プラットフォームは、ユーザーの「より良い体験」がトレンドで、自分の分身をおしゃれに着飾ってみたり、仮想空間で実在アーティストのライブを視聴するなどエンタメ性に長けたプラットフォームが支持される傾向が見られます。ゲームをはじめとするエンタメ業界で成長を続けて来た勢いが続いていると見て良いでしょう。
導入が簡単なおすすめメタバースプラットフォーム5選
メタバース・プラットフォームにはそれぞれ得意分野があるため、企業としてサービスを利用するには自社にマッチしたものを選ぶ事が大切です。ここでは、簡単に仮想世界を生成出来る人気のプラットフォームを5つご紹介しますので参考にしてみてください。
ZEPETO|NAVER Z Corporation(韓国)

メタバースに初めて触れるという場合には、手軽にメタバース空間を体験・構築出来るZepetoがおすすめです。Zepetoはスマホ・タブレット向けのアプリで、ユーザー数は3億人を超える有名作品となっています。好みのアバターを直感的に作成可能で、PCで専用ソフトを用いてオリジナルワールドを作成する事もできます。仮想空間のワールドやアイテムは収益化出来るため、大手携帯キャリアやファッションブランドなどが既に参入しています。
- サービス名:Zepeto(ゼペット)
- 運営会社:NAVER Z(韓国 京畿道城南市)
- 費用:基本無料
- 視聴環境:スマホ・タブレット(androidおよびiOS)
Fortnite|Epic Games, Inc.(アメリカ)

手軽にメタバース空間を構築するのにおすすめなプラットフォームとしてはもう1つ、Fortniteが候補に挙げられるでしょう。Fortniteと言えばクラフト要素を組んだオンライン対戦型TPSとして有名ですが、2018年12月に誰でも手軽にワールドを作成出来るクリエイティブモードが追加された事でメタバースとしての活用が注目されるようになりました。ワールドのデザインはもちろん、ユニークなゲームを作成してユーザーに楽しんでもらう事も可能です。国内外の大物アーティストがワールド内でライブを開催するなど盛り上がりを見せており、日本からはトップアーティストとして知られる米津玄師が参加しました。
- サービス名:Fortnite Creative
- 運営会社:Epic Games, Inc.(アメリカ ノース・カロライナ州)
- 費用:基本無料
- 視聴環境:Nintendo Switch・PlayStation 4・Xbox One・Android・macOS・iOS・Windows
VRChat|VRChat, Inc.(アメリカ)

ユーザーとのコミュニケーションをメインにメタバースを活用する場合は、VRChatがおすすめです。VRChatはアバター・ワールド作成の自由度が高いという点が大きな特徴であり、個性豊かな作品が数多く展開されています。「自社の世界観をユーザーにもっと知って欲しい」といった企業に適したメタバース・プラットフォームと言えるでしょう。VRデバイスにも対応していますが、PCのみでも運用する事が可能です。イベントも盛んに開催されており、不動産・IT・エンタメなど多くの大手企業が出展して話題を呼んでいます。
- サービス名:VRChat
- 運営会社:VRChat, Inc.(アメリカ サンフランシスコ)
- 費用:基本無料(特典付きの有料版あり)
- 視聴環境:Oculus Quest・Windows
Cluster|クラスター株式会社(日本)

国産のメタバース・プラットフォームとして人気が高いのがClusterです。マルチプラットフォーム対応で様々な環境に対応出来る点が強みとなっており、国内での評価は上々となっています。アバター・ワールド・ゲーム・イベントなどメタバースで出来る事をバランス良く兼ね備えているため、初めてのプラットフォームとしても人気です。多数の企業とコラボ実績がありますが、アニメやVtuberなど日本を代表するサブカルチャー業界からの信頼も厚いプラットフォームとして知られています。
- サービス名:Cluster
- 運営会社:クラスター株式会社(日本 東京)
- 費用:基本無料(有料イベント開催に場合はロイヤリティあり)
- 視聴環境:Windows・Mac OS・Android・iOS・Oculus Quest 2
REALITY|REALITY株式会社(日本)

元々ライブ配信アプリとして開発されたという経緯があるREALITYも、初めてのメタバースにおすすめの国産プラットフォームです。個人向けの基本無料アプリの他にも、法人運用向けに特化したREALITY XR cloudと呼ばれるソリューションが用意されています。予算をかけて大々的なイベントを開催したい時には、実績とノウハウが豊富な運営から強力なバックアップを受ける事が可能です。REALITYのアプリが既に800万ダウンロードを達成している事からも、信頼性の高さが窺えるでしょう。出版・放送・通信をはじめ芸能関係の企業も数多く利用しているメタバース・プラットフォームです。
- サービス名:REALITY
- 運営会社:REALITY株式会社(日本 東京)
- 費用:REALITY 基本無料/REALITY XR cloud 応相談(例:1Dayバーチャルイベントの総合プロデュースであれば税込み440万円)
- 視聴環境:android・iOS
メタバースはビジネス界で広がりを見せている
メタバースのビジネス運用は国内においても着実に広がっています。例えば、大手レーベル会社のavex社はメタバース・プラットフォームのThe Sandboxとパートナーシップとなり、アーティストとファンが仮想空間上で交流する場を設けました。スポーツウェアブランドのNIKEはROBLOXと呼ばれるプラットフォームに仮想店舗を出展、アイテムをアバターに着せ替えするなどのサービスを展開し、来場者数は670万人を超えています。小売業界でも仮想店舗を出展し、実際のオンラインショップと連携して売上に直結させる取り組みが増えています。
こうしたメタバース活用の流れは今後も加速していく事が予想されており、企業側としては注意深くアンテナを張り巡らせておきたいところでしょう。
メタバースは現代ビジネスのトレンド!まずは簡単なものから慣れ親しんでみよう
IT技術が発展した現代ビジネス界において、メタバースは大きな潮流を生み出す概念として注目されています。まずはスモールスタートとして簡単に運用出来るアプリを導入し、ノウハウを蓄積した段階で自社のワールドを本格的に構築していくのがおすすめです。
今後、リアルな人物モデルをメタバース空間で活用する展望があれば、イメージナビ株式会社の「INAIMODEL」についても導入を検討していただければ幸いです。
バーチャルヒューマン生成サービス「INAIMODEL」はAI技術を駆使して実在しないルックスのモデルを作成する事が可能であり、SNS・商品広告・ECサイトなど幅広いシーンで活用されています。実在のモデルと契約する必要がないため、契約コストの削減や撮影内容に囚われない柔軟な運用が可能です。競合他社とのモデルのバッティングを心配する必要もなく、仮想空間を主軸としたメタバースと親和性が高い事からも、メタバース活用と合わせておすすめします。